実家・空き家・片付け

実家は売る・貸す・解体・保有のどれ?費用・税・手間・戻しやすさで比較

思い出と負担のどちらも関わる実家では、家族の意見が割れるのも無理はありません。売る・貸す・解体・保有は、受取額の大きさだけでなく、初期費用と継続費、税、管理を担う人、選択後に戻せるかを同じ表へ置き、条件が確認できた案から検討します。

目次
  1. 結論 4案は手取り額だけで決めない
  2. 4つの軸を同じ期間でそろえる
  3. 売るか貸すかは手取りと管理期間で比べる
  4. 解体か保有かは危険と土地利用で比べる
  5. 家族の意見が割れたら条件表で保留する
  6. 契約前に3つの数字と書類をそろえる
  7. 行き詰まったときの相談先と最終確認

状況を整理する

この記事でわかること

  • 4案を費用・税・手間・戻しやすさで比べる方法
  • 売却費用と譲渡所得課税の基本
  • 賃貸の修繕・原状回復・管理委託の負担
  • 解体後の住宅用地特例と滅失登記

結論 4案は手取り額だけで決めない

実家の選択肢は、売却価格や家賃だけでは比べられません。売却、賃貸、解体、保有で、費用が出る時期が違うからです。

売却と解体は実行後に元へ戻せません。賃貸は契約期間中に自由に使えず、保有中は費用と管理が続きます。「いくらになるか」と「誰がいつまで責任を持つか」を別々に決めます

  1. 名義と決定に参加する人を確認する
    土地・建物の登記名義、相続人、共有者、親本人の意思、代理権の有無を確認します。
  2. 危険と利用期限を確認する
    雨漏り、傾き、設備、接道、境界を見て、家族が使う人と利用開始時期を書きます。
  3. 同じ条件で資料を集める
    現況売却と更地売却の査定、賃料査定、改修見積もり、解体見積もり、年間維持費を集めます。
  4. 費用と税の時期を分ける
    契約前、実施時、毎年、終了時に分け、受取額から差し引く項目を表へ入れます。
  5. 手間と戻しやすさを担当者で比べる
    連絡、現地対応、申告、借主対応を担う人と、途中でやめる条件を決めます。
  6. 期限を置いて一案を詳しく調べる
    すぐ契約せず、不明条件の確認期限と、家族で再び判断する日を決めます。

次の表を家族で埋め、見積書や課税明細で具体化します。

選択肢 費用・税・手間の出方 元に戻せるか
売る 仲介手数料、測量・家財・登記等、譲渡所得税を確認。売却後の管理は終わる 引渡し後は戻せない
貸す 入居前改修、募集、管理委託、空室、修繕、原状回復が継続する 契約終了後は再検討できるが、期間中は制約される
解体する 解体、石綿調査、家財、滅失登記等が先に出る。翌年度以降の土地課税を確認 建物は戻せない
持ち続ける 固定資産税、保険、見回り、庭木、光熱、修繕が毎年出る 後で他案へ移れるが、劣化や市場変化は戻せない

一案に絞れないときは、二案を残して追加調査へ進みます。危険箇所への応急対応は先に行います。

4つの軸を同じ期間でそろえる

家族が別々の期間を見ていると、話がかみ合いません。売る人は今の手取り、貸す人は10年分の家賃、残す人は思い出を見ているかもしれません。比較期間を、まず5年など一つにそろえます。家族の利用予定が2年後なら、2年後も併記します。

比較軸 確認する内容 メモに残すこと
費用の出方 初期費用、年ごとの収支、終了時費用、突発費 金額、支払時期、見積もりに含まれない項目
固定資産税、都市計画税、所得税・住民税、特例 誰の税か、適用要件、確認した窓口
手間 現地確認、契約、入居者対応、工事、申告 担当者、頻度、遠距離移動、外部委託の範囲
元に戻せるか 所有権、建物、利用時期、契約終了条件 取消しにくくなる時点、家族の再確認日

費用は「売却代金-費用-税」と「家賃収入-初期費用-毎年費用-終了時費用」を、同じ期間で見ます。貸す案では満室を前提にせず、空室期間と大きな修繕を別枠にします。保有案も支出がない年だけで見ず、屋根、給湯、庭木などの突発費を予備費として置きます。

税は納税通知書と取得時の資料から確認します。固定資産税評価額は売れる価格とは別です。親の売買契約書、領収書、建築資料は、取得費の資料として分けて保管します。

手間は、見回り、災害後の確認、管理会社との連絡、税務申告などへ分けます。委託しても、所有者の判断や修繕費の負担は残ります。

元に戻せるかは、契約前、契約後、引渡し・着工後で変わります。売却は引渡し、解体は着工で大きく後戻りしにくくなります。賃貸では借主がいる間、家族の都合だけで直ちに明け渡してもらえるとは限りません。契約の種類と終了条件を契約前に専門家へ確認します。

売るか貸すかは手取りと管理期間で比べる

売る案は、まとまった代金を受け取り、引渡し後の管理を終えられる点が特徴です。一方、仲介手数料、登記や境界、家財、契約条件への対応、譲渡所得に対する税を見込む必要があります。査定額は成約額でも手取り額でもないため、査定根拠と差引項目を聞きます。

国土交通省の報酬額告示では、売買の仲介手数料に上限を定めています。400万円を超える部分は税込3.3%など、代金を区分して計算します。売買代金800万円以下の「低廉な空家等」では、媒介に要する費用を考慮し、依頼者一方から受ける報酬を税込33万円以内とする特例があります。これは上限であり、実際の金額は媒介契約書で確認します。

売却の費用項目 確認する内容 変わる条件
仲介手数料 税込額、低廉な空家等の特例、支払時期 売買代金、媒介内容、合意額
登記・境界 相続・住所変更等の登記、測量、境界確認 登記状態、共有、境界標、隣地との状況
家財・修繕・解体 現況で渡す範囲、契約不適合責任、撤去時期 買主の条件、建物状態、残置物
譲渡所得税等 収入、取得費、譲渡費用、特別控除 取得資料、所有期間、特例の要件

土地建物の譲渡所得は、国税庁の案内によると「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算します。売却代金の全額に税率を掛ける仕組みではありません。売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかで長期・短期が分かれ、税率も変わります。相続では被相続人の取得時期を引き継ぐ扱いなどがあるため、個別資料を税務署または税理士へ示します。

相続した空き家では、被相続人の居住用財産の特別控除を使える場合があります。対象家屋の建築時期、区分所有でないこと、相続直前の居住、相続後の利用、譲渡期限、売却額、耐震または解体などの要件があります。控除は最高3,000万円ですが、2024年1月1日以後の譲渡で取得した相続人が3人以上なら最高2,000万円となる場合があります。ここでは制度の入口にとどめ、売買契約や解体の前に別記事と税務相談で確認します。

貸す案では、家賃から管理委託費だけを引く計算では足りません。入居できる状態にする修繕、募集時の費用、火災保険、固定資産税、空室中の光熱、設備故障、退去後の原状回復を見ます。古い実家は、耐震、雨漏り、給排水、電気容量、浄化槽、接道などにより改修範囲が変わります。

国土交通省の原状回復ガイドラインは、経年変化や通常使用による損耗の修繕費は賃料に含まれるという考え方を示しています。借主が退去時にすべて新品へ戻すという意味ではありません。貸主が負担する修繕と借主負担になる損傷を契約書で確認し、入居時の写真を残します。

管理委託料の表示は、月額賃料に対する割合、定額、業務別など契約で異なります。掲載された割合だけを相場として使わず、集金、苦情、緊急対応、更新、退去立会い、修繕手配がどこまで含まれるかを書面で比べます。家賃保証やサブリースは、賃料改定、中途解約、修繕負担も別に確認します。

貸す案を残す条件は、需要があることに加え、貸主として修繕費と判断の責任を負えることです。将来家族が住むなら、入居予定時期と賃貸借契約の終了条件が両立するかを法律相談で確かめます。

解体か保有かは危険と土地利用で比べる

解体は、傷んだ建物による危険や建物管理を減らし、更地として使う道を開きます。ただし、建物を失い、土地の税の扱いが変わるため、「古いから先に壊す」とは決めません。建物付きで買いたい人がいるか、再建築できる土地か、解体後に売る・使う予定があるかを先に調べます。

解体見積もりは、建物本体だけでなく範囲をそろえます。家財、庭木、塀、物置、井戸、浄化槽、基礎、地中埋設物、重機搬入、道路使用、廃材処分、近隣対策、石綿調査、各種届出を確認します。金額は構造、延べ床面積、接道、地域の処分条件、石綿の有無で変わるため、現地調査後の書面見積もりを複数取り、追加費用となる条件を聞きます。

環境省の案内では、建築物の解体・改修工事の元請業者等に石綿含有建材の事前調査を求めています。床面積80平方メートル以上の建築物解体工事などは、調査結果の報告対象です。報告対象未満でも事前調査そのものが不要になるという意味ではありません。調査費、分析費、除去費が見積もりのどこに含まれるかを確認します。

建物を取り壊すと、建物分の固定資産税は翌年度以降なくなる方向ですが、土地側では住宅用地特例が外れる場合があります。横浜市の説明では、1月1日時点で住宅を取り壊して駐車場にした土地は住宅用地特例を受けられないとしています。

小規模住宅用地の固定資産税の課税標準が価格の6分の1となる仕組みから、「解体すると固定資産税が6倍」と言われることがあります。しかし、実際の納税額には土地の面積と評価、負担調整、都市計画税、家屋分の減少、建替え中の土地などの例外が関係します。解体前に、所在地の固定資産税担当へ翌年度の試算条件を確認します

登記された建物を取り壊した後は、建物滅失登記も必要です。不動産登記法第57条では、表題部所有者または所有権の登記名義人が滅失の日から1か月以内に申請すると定めています。法務局の案内で様式を確認でき、土地家屋調査士へ依頼する方法もあります。自分で申請する場合と依頼する場合で、書類取得や報酬の有無が変わります。

解体時の費用項目 見積もりで確認する範囲 変わる条件
本体・付帯工事 建物、基礎、塀、庭木、物置、整地 構造、面積、敷地、重機搬入
家財・廃棄物 残置物、家電、危険物、地中埋設物 量、分別、処分先、発見時期
石綿 事前調査、分析、届出、除去 建築時期、建材、調査結果
登記・行政 滅失登記、届出、証明書、専門家報酬 登記状態、依頼範囲、自治体
解体後 防草、柵、見回り、土地の税 跡地利用、売却時期、1月1日の状態

保有は何もしない案ではありません。固定資産税・都市計画税、保険、最低限の光熱、見回り交通費、庭木、害虫、清掃、修繕が続きます。空き家向けの管理委託を使う場合も、点検項目、写真報告、災害後の臨時確認、郵便物、換気、庭の作業を分けて見積もります。

保有が候補になるのは、家族が使う人と時期が具体的で、その時期まで安全に管理できる場合です。「いつか使う」だけなら、6か月後や1年後に見直す日を置きます。その間に現況査定、賃貸需要、解体後の税を調べます。期限までの維持費は、選択を保留するための費用として家族で分担を決めます。

家族の意見が割れたら条件表で保留する

意見の違いには、金銭だけでなく、親への思い、帰る場所を失う不安、近隣への責任、費用負担の偏りがあります。「売りたい人」「残したい人」と分ける前に、それぞれが守りたいことを書きます。

家族の主張 条件へ置き換える質問 確認する資料
思い出があるので残したい 誰がいつ使い、年いくらまで管理できるか 利用予定表、年間維持費、建物診断
負担なので売りたい 税引き後の手取りと売れるまでの期間はどうか 査定根拠、費用表、税務相談メモ
家賃を得たい 改修費を含む5年間の収支と管理担当はどうか 賃料査定、改修・管理見積もり
危ないので壊したい 応急措置で待てるか、解体後の用途と税はどうか 安全確認、解体見積もり、税の試算

共有名義や相続人間で意見が割れている場合、誰の同意が必要かを確認します。親の判断能力に不安がある場合も、子どもだけで決められるとは限りません。委任、成年後見、遺産分割などの要否は専門家へ確認します。

売却と解体については、契約締結前に家族の最終確認点を置きます。賃貸では募集開始前と契約前、保有では見直し日に置きます。口頭の賛否だけでなく、費用負担者、最低売却条件、改修予算の上限、解体後の土地利用を議事メモに残します。

判断を保留するときも、保留期間、管理担当、予算、危険時の連絡方法、次回会議の日を決めます。査定や見積もりは情報収集、媒介・工事契約は外部との約束と段階を分けます。

契約前に3つの数字と書類をそろえる

最終候補が二つになったら、数字を一枚にまとめます。事業者ごとに前提が違うと比較できないため、建物の状態、家財の扱い、引渡し時期をそろえて依頼します。

そろえる数字・書類 内容 判断への使い方
売却の手取り試算 現況・更地の査定、売却費用、取得費、税の仮計算 解体して売る案との差を見る
賃貸の期間収支 賃料、空室、改修、管理、税、修繕、終了時費用 利用予定までの期間で見る
保有・解体の総額 年間維持費、解体見積もり、翌年度の土地課税 保留期間と解体時期を比べる

売却査定では「この価格の根拠となる成約事例」「売出価格と成約見込み」「現況のまま買う人の想定」を聞きます。更地査定が高くても、解体費と税、売れるまでの管理費を引いた結果が現況売却より高いとは限りません。

賃貸では、募集賃料だけでなく入居までの想定期間、改修の最低範囲、管理委託の業務、年間修繕の置き方を聞きます。事業者が示す収支は、空室や設備交換をどのように置いた数字かを確認します。

解体では、補助制度がある自治体もあります。国土交通省の空き家対策サイトも、実家所在地の市区町村へ補助金を確認するよう案内しています。着工前申請、対象建物、所得、施工業者、予算枠などの条件があるため、交付決定前に契約や着工を進めてよいかを窓口へ聞きます。

最後に、査定が一定額未満、改修が予算超過、危険が増した場合など、案を変える条件を決めます。家族のどちらが正しいかではなく、確認結果で次へ進めます。

行き詰まったときの相談先と最終確認

空き家の相談は、所在地、税、権利、契約で窓口を分けます。一度に結論を求めず、各窓口へ同じ資料を見せ、回答日と担当部署を記録します。

相談先 相談する内容 持参・共有するもの
実家所在地の自治体の空き家窓口 管理、活用、解体補助、地域の相談会、空き家バンク 所在地、写真、空き家期間、家族の候補案
自治体の固定資産税担当 解体後の住宅用地特例、翌年度の試算条件 納税通知書、課税明細、解体予定日、跡地利用
税務署・税理士 譲渡所得、取得費、所有期間、空き家特例 売買・建築資料、相続資料、査定、費用見込み
法務局・土地家屋調査士 建物滅失登記、建物・土地の表示、境界 登記事項証明書、地図、解体証明資料
司法書士・弁護士 相続登記、共有、親の代理、家族間の対立、契約 相続関係図、遺言、登記、家族会議メモ
法テラス 法制度と相談窓口の案内、要件を満たす場合の法律相談 困っている点、関係者、収入・資産資料

国税庁の相談案内では、一般的な質問は電話相談センター、書類や事実関係の確認が必要な相談は所轄税務署で事前予約の面接相談を案内しています。特例を前提に売却や解体を進める前に、対象家屋と時期を具体的に伝えます。

法テラスは、相談内容に応じた法制度や窓口情報を案内しています。無料法律相談には収入・資産などの要件があります。共有者との話し合いが止まった、親の代理権が分からない、賃貸契約の終了条件を確認したい場合は、争いが深くなる前に相談先を探します。

最終確認では、①決める権限がある人、②比較期間、③各案の初期・毎年・終了時の費用、④税の確認先、⑤管理担当、⑥戻せなくなる時点、⑦再判断日を一枚へ記録します。結論を急ぐ事情がなければ、売却の引渡しや解体の着工までに家族の確認点を置きます。一方、倒壊や落下の危険がある箇所は、処分の結論と分けて自治体や建築の専門家へ早めに相談します。

よくある疑問

よくある質問

実家は売るのと貸すのではどちらが得ですか?

売却価格と家賃だけでは決まりません。売却は仲介手数料や譲渡所得税、賃貸は改修、管理委託、空室、修繕、退去後の原状回復を含めます。家族の利用予定と管理できる期間も置き、税引き後の手取りと年ごとの収支を同じ期間で比べてください。

実家を解体すると固定資産税は6倍になりますか?

住宅を解体し、1月1日時点で住宅用地でなくなると、土地の住宅用地特例が原則として外れます。ただし、実際の税額は土地の評価額、面積、負担調整、都市計画税、解体した家屋分の減少などで変わるため、一律に6倍とはいえません。所在地の固定資産税担当へ試算を依頼します。

相続した空き家を売ると3,000万円控除を使えますか?

被相続人が住んでいた家であること、建築時期、区分所有でないこと、相続後の利用、譲渡時期、売却額など複数の要件があります。相続人が3人以上の場合は控除上限が2,000万円となる場合もあります。契約や解体の前に税務署または税理士へ個別条件を確認してください。

家族の意見が割れたまま解体見積もりを取ってもよいですか?

見積もりは比較材料として取れます。ただし、工事契約や着工は建物を戻せなくするため別の段階です。見積もりの範囲、石綿調査、家財、地中埋設物、補助申請の時期を確認し、現況売却と更地売却の査定もそろえてから家族で再検討します。

関連情報・信頼性

出典・参考資料

  1. 国土交通省「宅地建物取引業法関係」(2026年7月26日確認)
  2. 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」(2026年7月26日確認)
  3. 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(2026年7月26日確認)
  4. 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて」(2026年7月26日確認)
  5. 横浜市「住宅を取り壊して駐車場にした場合の固定資産税は」(2026年7月26日確認)
  6. 法務局「建物を取り壊した/建物を新築した」(2026年7月26日確認)
  7. 環境省「石綿事前調査結果の報告について」(2026年7月26日確認)
  8. 国土交通省「空き家対策 特設サイト」(2026年7月26日確認)
  9. 国税庁「国税に関するご相談について」(2026年7月26日確認)
  10. 法テラス「相談窓口・法制度」(2026年7月26日確認)