高齢の親を特殊詐欺から守るには?固定電話の対策と家族で決める連絡ルール

離れていると、親が電話や訪問者にどう応じているか見えず心配になりますよね。対策は親の注意力だけに任せず、固定電話を直接受けない仕組みと、金銭や契約の話が出たらいったん止めて家族へ折り返す連絡ルールを一緒に決めます。
目次
状況を整理する
この記事でわかること
- 最新統計から見る特殊詐欺の手口と接触方法
- 固定電話に置く対策と自治体助成の確認方法
- 訪問販売・訪問購入の断り方と契約後の対応
- 家族の合言葉、折り返し、口座の連絡ルール
いまの状況にいちばん近いのは?
結論 親の注意力ではなく仕組みで止める
特殊詐欺対策は、手口を暗記して見破ることだけではありません。相手と直接話さない、金銭の判断をその場で終えない、家族が確認できるという三つの仕組みに分けます。「電話に出た人が判断する家」から「いったん止めて家族へつなぐ家」へ変えることが出発点です。
- 固定電話を直接受けない設定にする
在宅中も留守番電話にし、呼出回数を短くします。必要に応じて、録音警告、番号表示、非通知拒否、迷惑電話の着信拒否を組み合わせます。 - 家族と知人の番号を登録する
電話帳の表示名を親と一緒に確認します。知らない番号は録音を聞いてから、相手が名乗った組織の公式番号を自分で調べて折り返します。 - 金銭の話を止める言葉を電話横へ置く
「電話では決めません。家族に確認します」と書いた紙を受話器の近くに貼ります。暗証番号、口座残高、カードは答えない項目として並べます。 - 家族の確認ルートを一本にする
合言葉と第一連絡先、つながらない場合の第二連絡先を決めます。家族を名乗る電話もいったん切り、登録済み番号へ折り返します。 - 訪問者とは玄関越しに対応する
点検、工事、買い取りを名乗っても家へ入れず、名刺と書面を郵便受けへ入れてもらいます。その場で契約、支払い、品物の引渡しはしません。 - 異変があれば相談先を切り替える
契約や解約は188、不審電話や犯罪かもしれない相談は#9110、相手が家にいるなど緊急時は110です。金銭管理の難しさが続くときは福祉の相談先へつなぎます。
親には「私も迷うから、家族全員のルールにしたい」と伝えます。誰が受けても同じ動作にすると、親を監視する形になりにくくなります。
最新統計と五つの手口から止める場面を決める
警察庁の令和7年確定値では、特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は1,423.1億円でした。前年と比べ、件数は32.3%、被害額は98.0%増えています。この資料は2026年7月2日の訂正が反映された公表資料です。
65歳以上の被害は14,273件、841.1億円でした。法人被害を除く認知件数の51.3%、被害総額の59.2%を占めます。「高齢だから」と親を責めず、家族共通の問題として扱います。
最初の接触手段は電話が78.8%でした。オレオレ詐欺、預貯金詐欺、キャッシュカード詐欺盗を合わせた件数は17,439件で、全体の62.7%です。令和7年は、警察官等をかたる「ニセ警察詐欺」の被害も顕著でした。電話を入口で止める対策が中心になります。
| 主な手口 | 相手が持ち出す話 | 家族で決める止め方 |
|---|---|---|
| オレオレ詐欺 | 親族の事故・事件、警察の捜査、示談金、至急の送金 | 相手の番号へ戻さず、親族の登録済み番号へ折り返す。合言葉だけで本人確認を終えない |
| 預貯金詐欺 | 口座が犯罪に使われた、カードの交換が必要、職員が預かる | 暗証番号を言わない。カード、通帳を渡さない。金融機関の公式番号へ確認する |
| 架空料金請求詐欺 | 未納料金、パソコンのサポート、副業費用、電子マネー購入 | 記載された連絡先へ電話しない。画面を閉じ、家族か188、#9110へ相談する |
| 還付金詐欺 | 税金、保険料、医療費の還付、ATMでの受取手続き | ATMへ行かない。自治体の代表番号を自分で調べ、担当部署へ確認する |
| キャッシュカード詐欺盗 | カードが不正利用された、封筒へ入れて保管する | 訪問者を家へ入れず、カードから目を離さない。訪問中なら110へ連絡する |
警視庁の手口説明では、預貯金詐欺はカード等をだまし取る手口、キャッシュカード詐欺盗は隙を見てカード等を盗む手口として分けられています。名称を覚えるより、「お金、口座、暗証番号、カード、ATM、電子マネー」が出た時点で会話を止める方が運用しやすくなります。
行政、警察、金融機関を名乗っていても、相手が教えた番号ではなく、請求書や公式サイトにある番号へ自分から確認します。着信画面の番号表示だけで相手を信用せず、電話を切る動作を間に置きます。
固定電話は直接出ない設定を基本にする
電話対策は今の電話機から始められます。留守番電話があれば、在宅中も常時設定し、呼出回数を短くします。録音された用件を確認し、知っている相手へ折り返すところまで親と練習します。
警察庁の固定電話対策は、知らない番号に出ないことと、非通知着信を遮ることを案内しています。NTT東日本・西日本では、70歳以上の人、または70歳以上の人と同居する契約者を対象に、番号表示と非通知拒否の月額利用料・工事費を無償とする制度があります。申込みが必要で、回線や対応機器などに条件があります。
| 電話の対策 | 確認する内容 | 設定後に試すこと |
|---|---|---|
| 常時留守番電話 | 呼出回数を短くできるか、録音容量、再生音量 | 家族が電話し、親が用件を再生して登録番号へ折り返す |
| 番号表示・非通知拒否 | 回線事業者、対象条件、申込み、対応電話機 | 家族の表示名、非通知着信の動作、履歴の見方 |
| 自動通話録音機 | 呼出前の録音警告、既存電話との接続、電源 | 警告音声、録音再生、停電・機器不調時の動作 |
| 迷惑電話防止機能付き電話機 | 未登録番号への警告、自動録音、着信拒否 | よく使う連絡先の登録、誤って拒否した番号の戻し方 |
| 国際電話・不要な機能の停止 | 海外との通話が必要か、回線事業者の受付条件 | 家族の連絡に支障がないか、請求内容が変わったか |
録音警告付き機器は、呼出前に警告し、その後の通話を録音するものです。相模原市の2026年度制度のように、自治体が購入費を補助する例もあります。
ただし、対象年齢、世帯、機種、購入先、事前申請、上限額、期間は自治体ごとに異なります。電話機を買う前に「自治体名 特殊詐欺 電話機 補助」で検索し、住所地の防犯担当へ確認します。購入日、品番、領収書が申請要件になる場合があります。
設置後は、家族が月に一度ほどテスト電話をします。留守番電話、録音容量、連絡先表示を確認し、親が再生と折り返しを一人でできるかを見ます。
家族の合言葉と折り返しルールを一枚にする
合言葉は本人確認の補助にはなりますが、それだけで送金を決める鍵にはしません。会話の中で聞き出されたり、家族のSNSから推測されたりする可能性があるためです。合言葉が合っていても、登録済み番号への折り返しと別の家族への確認を重ねます。
電話の横へ置く一枚には、長い説明を書きません。親が緊張したときも読める大きさで、次の項目を載せます。
| 決める項目 | 家族のルール | メモに残すこと |
|---|---|---|
| 合言葉 | 家族しか答えにくい言葉を決め、定期的に見直す | 合言葉そのものは電話横へ書かず、決めた家族を記録 |
| 折り返し | いったん切り、親の電話帳に登録した番号へ親からかける | 第一連絡先、第二連絡先、つながらないときの待ち時間 |
| 金銭の判断 | 電話中・訪問中には送金、出金、契約をしない | 相談する家族、金融機関の代表番号、利用する口座 |
| 口座とカード | 暗証番号、残高、認証番号を伝えず、カードを渡さない | 通帳・カードの保管場所を知る本人、紛失時の連絡先 |
| 行政・警察の確認 | 相手が示した番号を使わず、公式の代表番号へ確認する | 市区町村、警察署、金融機関の公式番号 |
| 家族への共有 | 不審電話、SMS、訪問があった日と内容を共有する | 日時、名乗り、電話番号、要求、渡した情報の有無 |
親族を名乗る相手から「携帯番号が変わった」と言われても、その新しい番号は登録しません。元の番号へかけ、つながらなければ第二連絡先へ相談します。「今日中」「誰にも話すな」「守秘義務がある」と急がされても、家族への相談を優先します。
口座対策は、親の同意なく家族がカードを取り上げたり、勝手に預金を動かしたりする方法にしません。生活費が使えない、収支が分からないなどの問題につながります。限度額等を見直す場合も、親と金融機関へ相談し、変更内容を残します。
電話横に置く短い言葉
「電話ではお金を決めません。いったん切って家族へ電話します」「暗証番号と認証番号は言いません」「カードと通帳は渡しません」の三行に絞ります。相手を見破る質問より、自分が取る動作を書きます。
一度決めたルールは、親の生活に合うか試します。通院先や介護事業所から未登録番号で連絡が来るなら、留守番電話へ用件を残してもらうよう伝えます。親が電話を取ってしまった日も責めず、どこで切れたかを一緒に振り返り、紙の位置や文字を直します。
訪問者には玄関を開けず契約を持ち帰る
電話対策をしても、点検、工事、買い取りを名乗る人が訪ねてくることがあります。インターホン越しに用件、会社名、担当者名、連絡先を尋ね、名刺や案内を郵便受けへ入れてもらいます。「家族に確認します。今日は契約しません」と伝え、家へ入れません。
自治体、水道、電気などを名乗る場合は、訪問者が示す番号ではなく、検針票、契約書、公式サイトの代表番号へ確認します。玄関先で現金やカードを渡さず、口座情報も書きません。
訪問販売で契約してしまった場合、消費者庁の案内では、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、原則として書面または電磁的記録でクーリング・オフできます。根拠は特定商取引法第9条です。通知したメール、専用フォームの画面、はがきの両面、郵便の記録を保存します。
契約時は書面を受け取り、商品・役務、代金、支払方法、事業者名・住所・電話番号、担当者、契約日、クーリング・オフの記載を確認します。書面を受け取っていない、記載が足りない、事実と違う説明や威迫があった場合は、8日を過ぎていても対応できる可能性があります。自分で可否を決めず188へ相談します。通信販売には訪問販売と同じクーリング・オフ制度がない点にも注意が必要です。
貴金属の訪問購入では品物を渡さない
「不用品を買う」と訪問した業者が、貴金属や時計を見せるよう求める場合があります。これを訪問購入、いわゆる押し買いと呼ぶことがあります。依頼していない業者を家へ入れず、売る予定がない物を見せません。
消費者庁の訪問購入の案内では、事業者は物品の種類、購入価格、支払・引渡し時期、クーリング・オフ、引渡し拒絶などを記載した書面を渡す必要があります。法定書面を受け取った日から数えて8日以内は、特定商取引法第58条の14に基づきクーリング・オフができ、第58条の15に基づき物品の引渡しを拒めます。
査定や売買に同意しても、クーリング・オフ期間中は貴金属を手元に置くという選択ができます。品物を渡す前に、書面の物品名、特徴、点数、価格を写真と照合します。すでに引き渡した場合も、契約書と業者情報を用意して188へ相談します。相手が帰らない、威圧する、物を持ち去ろうとしている場合は110へ連絡します。
判断能力の変化があれば金銭管理の支援へつなぐ
不審電話が繰り返される、同じ契約を覚えていない、請求書を処理できない、生活費の出入りが分からない状態が続くときは、防犯機器だけでは支えきれません。親の体調や生活の変化も含め、地域包括支援センター、かかりつけ医、市町村の高齢福祉担当へ相談します。
家族が口座を代わりに動かす前に、本人が何に困り、どこまで判断できるかを確認します。家族が遠方で定期的に支払えない場合や、親族間で管理方針が一致しない場合は、公的・法的な支援へ早めにつなぐ方が記録と役割を明確にできます。
| 支援 | 向いている状況 | 最初の相談先 |
|---|---|---|
| 日常生活自立支援事業 | 判断能力が不十分だが、事業の契約内容は理解できる。福祉サービス利用や日常的金銭管理に支援が必要 | 市区町村の社会福祉協議会、地域包括支援センター |
| 成年後見制度の補助・保佐・後見 | 契約や財産管理を本人だけで行うことが難しく、法律的な支援や代理等を検討する | 市区町村の中核機関・権利擁護相談、家庭裁判所の案内窓口 |
| 任意後見 | 現在は判断能力があり、将来の支援者と任せる事務をあらかじめ契約したい | 公証役場、市区町村の成年後見相談窓口 |
厚生労働省の日常生活自立支援事業は、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助、日常生活上の消費契約の援助、日常的金銭管理、定期訪問などを行います。判断能力が不十分である一方、この事業の契約内容を判断できることが対象要件です。窓口業務は市町村社会福祉協議会等で行われ、利用料は実施主体によって異なります。
裁判所の案内では、成年後見制度を、判断能力が十分でない人について後見人等を選び、法律的に支援する制度と説明しています。補助、保佐、後見は判断能力の程度で分かれます。申立て後は家庭裁判所の許可がなければ取り下げられず、候補者がそのまま選ばれるとは限りません。制度の影響と費用を中核機関などで聞いてから申立てを検討します。
「だまされたから財産を取り上げる」ではなく、本人の意思と困り事を確認し、必要な範囲の支援を選びます。判断能力の変化が疑われても、本人を話し合いから外さず、理解しやすい言葉と資料で意向を確かめます。
行き詰まったときの相談先と最終確認
相談先は、契約問題か、犯罪への不安か、緊急事態かで分けます。どちらか迷うときは188または#9110へ状況を伝え、適切な窓口を尋ねます。電話番号、SMS、封書、契約書、領収書、振込記録、訪問日時は消さずに残します。
| 相談先 | 相談する内容 | 連絡前にそろえるもの |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン188 | 訪問販売・訪問購入、解約、クーリング・オフ、強引な勧誘、請求 | 契約書、広告、領収書、事業者名、勧誘の経緯 |
| 警察相談専用電話#9110 | 不審電話、詐欺かもしれない送金要求、犯罪に当たるか分からない悪質商法など、緊急でない警察相談 | 相手の電話番号、名乗り、要求、通話・送信日時、渡した情報 |
| 110 | 相手が家にいる、帰らない、脅されている、現金やカードを持ち去ろうとしているなど緊急時 | 安全を確保し、現在地、相手の人数・特徴、移動手段を伝える |
| 金融機関・決済事業者 | 送金した、カードや暗証番号を渡した、不審な取引がある | 口座・カード情報、取引日時と金額、振込先、本人確認書類 |
| 地域包括支援センター・社会福祉協議会 | 判断能力や生活の変化、日常的金銭管理、権利擁護支援 | 困った場面、請求や支払い状況、本人の意向、家族の支援状況 |
188は最寄りの消費生活センター等につながる番号で、クーリング・オフの通知方法や事業者との交渉を相談できます。#9110は、電話をかけた地域を管轄する警察本部等の相談窓口につながり、緊急ではない警察相談を受け付けます。一部のIP電話等ではつながらない場合があるため、都道府県警察の一般加入電話番号も電話横へ書いておきます。
最後に、常時留守番電話の動作、登録済みの家族番号、合言葉、第一・第二連絡先、口座を本人に無断で動かさないこと、訪問者を入れず契約書面を家族へ見せることを一枚で確認します。被害が疑われるときは親を責めず、相手との連絡を止め、記録を保存し、送金先の金融機関と相談窓口へ速やかに連絡します。
よくある疑問
よくある質問
親が知人からの電話を逃したくないと言うとき、留守番電話にできますか?
登録した家族や知人にも最初は録音へ用件を入れてもらい、親が相手を確認してから折り返す運用にします。呼出回数を短くし、家族と一緒に再生・折り返しを練習すると移行しやすくなります。
警察官を名乗る電話で口座が犯罪に使われたと言われたらどうしますか?
相手が示した番号や転送先には連絡せず、いったん電話を切ります。通帳、暗証番号、口座残高を伝えず、警察署の公式番号を自分で調べて確認するか、緊急でなければ#9110へ相談します。
訪問販売の契約書を受け取ってから8日を過ぎたら解約できませんか?
書面の記載不備やクーリング・オフを妨げる行為があった場合など、8日を過ぎても対応できる可能性があります。契約書、領収書、勧誘時のメモをそろえ、早めに消費者ホットライン188へ相談してください。
親のキャッシュカードを家族が預かれば詐欺対策になりますか?
本人の同意や必要性を確認せず、家族が一方的に預かって口座を動かす方法は避けます。日常的な金銭管理が難しくなった場合は、地域包括支援センターや社会福祉協議会へ相談し、日常生活自立支援事業や成年後見制度を検討します。
関連情報・信頼性
出典・参考資料
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年7月26日確認)
- 警察庁「特殊詐欺の認知・検挙状況等について」(2026年7月26日確認)
- 警視庁「特殊詐欺とは」(2026年7月26日確認)
- 警察庁「固定電話の番号表示・非通知拒否サービス」(2026年7月26日確認)
- 相模原市「特殊詐欺防止対策のため迷惑電話防止機能付き電話機などの購入費を補助します」(2026年7月26日確認)
- 消費者庁「訪問販売」(2026年7月26日確認)
- 消費者庁「訪問購入」(2026年7月26日確認)
- 消費者庁「消費者ホットライン」(2026年7月26日確認)
- 警察庁「犯罪被害の相談に関すること」(2026年7月26日確認)
- 厚生労働省「日常生活自立支援事業」(2026年7月26日確認)
- 裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」(2026年7月26日確認)


