死後事務委任契約の費用は?頼める手続きと預託金を確認する順番

死後事務委任契約の費用を考える書類ファイルと預託金を落ち着いた緑の線画で描いたイラスト

自分の死後を頼める人が少ないと、葬儀から住まいの片付けまで誰が動くのか不安になりますよね。死後事務委任契約では実務を項目ごとに頼み、相続分の指定や遺贈は遺言に分けたうえで、費用は報酬・実費・預託金を区別し、預託金の保全と第三者の履行確認まで確かめます。

目次
  1. 結論 頼む事務と財産承継を分けて決める
  2. 死後事務で頼めることと頼めないこと
  3. 遺言・任意後見・見守り契約と役割を分ける
  4. 費用は契約・報酬・実費・預託金に分ける
  5. 預託金は破綻時の保全まで確認する
  6. 解約・返金と履行の監督を契約書に入れる
  7. 行き詰まったときの相談先と最終確認

状況を整理する

この記事でわかること

  • 死後事務委任契約で頼めることと頼めないこと
  • 遺言・任意後見・見守り契約との役割分担
  • 契約作成費、事務報酬、実費、預託金の違い
  • 預託金の保全、解約・返金、履行確認の確認項目

結論 頼む事務と財産承継を分けて決める

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となる事務を、生前に選んだ受任者へ頼む契約です。葬儀、行政への届出、住まいの明渡しなどを具体的に決めます。一方、財産を誰へ渡すかは遺言の役割です。「死後のこと」を一つにまとめず、事務と財産承継を分けます

  1. 死後に残る事務を一覧にする
    葬儀・火葬、納骨、連絡、行政手続き、公共料金、住まい、家財、デジタル契約を洗い出します。
  2. 頼む事務と頼まない事務を分ける
    手続きごとに期限、希望、費用上限、受任者が対応できない場合の予備手段を決めます。
  3. 遺言と役割を分担する
    相続分の指定、遺贈、遺言執行者の指定などは遺言で検討し、死後事務委任契約と矛盾がないか確かめます。
  4. 総費用を三つに分ける
    契約書作成・公正証書の費用、受任者の事務報酬、葬儀や片付け等の実費を分けて書面で確認します。
  5. 預託金の保全と返金を確かめる
    算定根拠、管理名義、分別、信託、残高報告、破綻時の扱い、解約時と死後の残金返還を確認します。
  6. 履行を確認する人を置く
    受任者とは別の第三者、相続人、遺言執行者など、実施記録と精算を受け取る人を契約書に定めます。

消費者庁のガイドラインは、契約内容、費用、預託金、残金の扱いを契約書と重要事項説明書へ明記することを示しています。事業者の説明資料だけでなく、実際に署名する契約書、料金表、預託金規程を照合します。

死後事務で頼めることと頼めないこと

委任できる範囲は契約で決まります。「死後事務一式」とだけ書かれていると、希望する事務が含まれるか判断できません。手続き名、実施条件、費用上限、完了記録を項目ごとに書きます

事務 契約書で確認する内容 対応できない場合・注意点
関係者への連絡 誰へ、どの順で、何を伝えるか。連絡先の更新時期 死亡を受任者へ伝える医療・介護関係者も決める
葬儀・火葬・納骨 葬儀形式、規模、宗教者、火葬場、納骨先、費用上限 火葬許可等の手続き主体、墓地・納骨先の受入条件を確認
行政手続き 医療保険、介護保険、年金など、対象と必要書類 死亡届を出せる人は戸籍法上の範囲があり、受任者なら誰でも届出人になれるわけではない
公共料金等の解約 電気、ガス、水道、電話、携帯電話、インターネット、NHK等 契約先が受任者からの解約を受け付けるか事前確認が必要
住まいの明渡し 賃貸人への連絡、賃貸借契約の解除、鍵の返却、原状回復 賃貸借と残置物について、それぞれ権限が分かる条項にする
家財・遺品の整理 形見として渡す物、保管する物、廃棄できる物、見積方法 相続財産を受任者の判断だけで処分しない。相続人や遺言執行者との連携を定める
費用の精算 病院、施設、葬儀、公共料金等の支払範囲と証憑 税務申告など、資格や納税義務者の関係で受任者ができない事務がある

消費者庁のガイドラインは、死亡確認と連絡、葬儀・火葬・納骨、行政手続き、費用精算、家財整理、ライフライン停止などを死後事務の例に挙げています。ただし、これはどの契約にも自動で含まれる一覧ではありません。

賃貸住宅では、法務省と国土交通省の残置物モデル契約条項も参考になります。処分対象にするのは、原則として相続財産に当たらない物や、本人が指定した物です。形見分け、重要書類、金銭的価値がある物の扱いを先に定めます。

死亡届にも注意が必要です。消費者庁ガイドラインは、任意後見人・任意後見受任者などは届出できる一方、それに該当しない事業者は自ら届出できないと整理しています。「行政手続き代行」という表示だけで決めず、誰が届出人になり、受任者はどこを補助するかを確認します。

遺言・任意後見・見守り契約と役割を分ける

死後事務委任契約は実務を動かす契約ですが、財産の承継先を決めるものではありません。民法第902条の相続分の指定や、第964条の遺贈は遺言で定めます。

手段 主に決めること 費用が重なる場面
死後事務委任契約 葬儀、連絡、解約、住まい、家財、精算など死後の実務 契約作成、公正証書、事務ごとの報酬、実費、預託金
遺言 相続分の指定、遺贈、遺言執行者など財産承継 遺言作成、公正証書、証人、遺言執行報酬
任意後見契約 判断能力が不十分になった後の生活・療養看護・財産管理に関する代理 公正証書、登記、任意後見人と任意後見監督人の報酬
見守り契約 定期連絡・訪問、状態変化の把握、緊急時の連絡 初期費用、月額・年額、訪問・緊急対応の都度費用

たとえば、死後事務の実費を遺産から支払う設計なら、遺言執行者が使える財産と支払手順を確認します。受任者と遺言執行者が別なら、死亡連絡、資金交付、領収書、残金精算の受渡しを決めます。同じ法人や人物へ頼む場合も、死後事務報酬と遺言執行報酬が二重に見えない内訳を求めます。

判断能力が低下する前から死後までを支えるプランでは、見守り、財産管理、任意後見、身元保証、死後事務が一緒に提案される場合があります。国民生活センターの2025年の相談例では、身元保証・生活支援・葬送支援の契約代金が約190万円で、利用の都度別料金を請求され、解約時は半分しか返せないと言われた例が紹介されています。この金額は相談事例であり、料金の目安ではありません。

必要性は契約ごとに違います。元気な間の連絡が必要なら見守り、判断能力低下後の代理が必要なら任意後見、死後の実務が必要なら死後事務を検討します。セット名ではなく、開始時期、終了条件、担当者、費用、重複する業務を横並びにします。

任意後見契約は公正証書で作る必要があり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。死後事務委任契約は同じ方式義務ではありません。二つを同日に作る場合も、契約の効力と監督の仕組みを混同しないようにします。

費用は契約・報酬・実費・預託金に分ける

死後事務委任契約の費用には、性質の違うお金が含まれます。「総額」だけでなく、返金対象になるお金と、支払った時点で返らないお金を分けます

費用項目 公表資料の掲載額・確認方法 金額が変わる条件
公正証書作成手数料 日本公証人連合会の現行表では、死後事務委任は報酬を基に算定した通常手数料の2分の1。報酬の定めがない場合は6,500円 受任者報酬、証書の枚数、正本・謄本、役場外執務など
任意後見契約の公正証書 基本手数料13,000円、登記嘱託1,600円、印紙2,600円の公表額に、証書代・郵送料等が加わる 死後事務と別契約にするか、正本等の枚数、専門家への依頼
契約書の作成支援 依頼先へ個別確認 契約数、財産・相続関係の調査、遺言の併作、出張、証人手配
死後事務の報酬 死後事務支援協会の掲載例は、遺体引取り8万8,000円、葬儀・火葬代行11万円、納骨代行11万円、行政届出5,500円/件、公共料金支払い5,500円/件 依頼項目、件数、時間、地域、休日・夜間、移動、外部委託
葬儀・火葬・納骨等の実費 葬儀社、火葬場、寺院・霊園等から見積もりを取る 葬送方法、人数、地域、搬送距離、納骨先、宗教儀礼
家財整理・住まいの実費 物量と搬出条件をそろえた見積もりを取る 間取り、物量、階段、車両、廃棄方法、清掃、原状回復
預託金 実費や将来の報酬へ充てる前払金。算定明細と残高を確認 頼む事務、費用上限、葬送・住まい、追加預託条件

上表の死後事務報酬は、一つの一般社団法人が掲載する2026年7月26日時点の料金例です。全国共通の価格ではありません。同法人でも遺品整理は実費見積もりで、地域により出張費・交通費が生じると案内しています。依頼先を比べるときは、同じ事務一覧で見積もりを取ります。

公正証書の手数料も、専門家へ支払う契約書作成報酬や死後事務の報酬とは別です。日本公証人連合会の手数料表では、紙の正本等は1枚300円などの加算があります。作成前に公証役場へ案文と報酬条項を伝え、個別の手数料を確認します。

毎月の見守り費、緊急対応費、身元保証料、財産管理料があると、死後事務を使う前から支払いが続きます。料金表には「契約時」「毎月・毎年」「利用の都度」「死亡後」を書き込みます。値上げ条件、交通費、外部委託費、預託金不足時の追加額も確認します。

預託金は破綻時の保全まで確認する

預託金は、将来の死後事務報酬や葬儀・片付け等の実費に充てるため、先に預けるお金です。受任者が亡くなった後すぐ動ける利点はありますが、長期間預ける可能性があります。

消費者庁のガイドラインは、預託金を事業者の運転資金と明確に区分し、利用者へ定期的に管理状況を報告することが望ましいとしています。さらに、信託銀行または信託会社との信託契約による保全を望ましい方法として挙げています。

確認項目 契約前に聞くこと 書面に残すこと
算定根拠 どの事務の報酬・実費を何件分見込んだか 項目別金額、上限、予備費、見直し時期
管理主体 事業者、別法人、信託銀行・信託会社の誰が管理するか 口座・信託の名義、管理者、問合せ先
分別方法 運転資金と分け、利用者別残高を確認できるか 出納記録、領収書、残高報告の頻度
倒産隔離 事業者が破綻しても預託金が破産財団から切り離されるか 信託契約の有無、受益者、還付条件
不足時 物価上昇や追加事務で不足したらどうするか 追加預託の条件、同意手続き、代替案
残金 解約時と死後の精算後、誰へいつ返すか 控除項目、返金期限、振込先、報告先
破綻・廃業 事業を続けられないとき誰が引き継ぐか 引継先、通知方法、契約移転の同意、返金手順

専用口座や別法人で管理しているという説明だけでは、破綻時の保全を判断できません。同ガイドラインは、別法人への管理委託や分別預金では、倒産隔離が効かず、十分な還付を受けられない可能性があると注意しています。信託がある場合も、信託される金額、途中の引出条件、信託報酬、受託者、破綻時の受取人を確認します。

預託金を受け取らず、死後に遺産から精算する方式を示す受任者もいます。この場合は、死亡直後の搬送・火葬費を誰が立て替えるか、預貯金が凍結された場面で資金をどう用意するか、遺言執行者からいつ交付するかが課題です。預託するかどうかは、保全方法と死亡直後の資金手当を並べて決めます。

内閣府消費者委員会は、預託金の流用問題を踏まえ、預託金の保全措置と履行確認を課題として調査しています。財務諸表、事業継続計画、廃業時の方針を公表しているかも確認材料です。

解約・返金と履行の監督を契約書に入れる

死後事務委任契約は、本人が亡くなるまで長期間続くことがあります。引っ越し、家族関係、葬送の希望、財産、受任者の体制が変われば見直しが必要です。契約時に、変更と終了の出口を決めます。

項目 確認する内容 契約書・記録に残すこと
本人からの解約 通知方法、受付窓口、効力が生じる日 書面・電子通知の可否、必要書類
受任者からの解約 解約できる事由、事前通知、引継ぎ 予告期間、書類・預託金の返還
判断能力低下後 任意後見人・成年後見人との協議 契約を続ける条件、権限重複時の扱い
返金 入会金、作成費、前払報酬、預託金ごとの扱い 控除額、違約金、計算式、返金期限
契約変更 事務追加、料金改定、引っ越し時の手続き 本人の同意、改定前後の書面、追加費用
履行確認 誰が実施記録と精算を点検するか 報告先、報告期限、領収書、残金証明

国民生活センターの2019年の注意喚起には、説明のない精算や解約時の返金額への不満が寄せられています。2025年の注意喚起も、サービス内容、支払総額、解約条件の確認を案内しています。「解約できる」とだけ確認せず、いつまでに、何を差し引き、いくら返すかを費用区分ごとに読みます

本人は死後の履行を確認できません。消費者庁ガイドラインは、第三者による定期的な点検の仕組みが有効とし、推定相続人等への報告を挙げています。報告義務だけを受任者へ任せず、次のいずれかを検討します。

  • 契約上の監督者: 受任者と利害関係の薄い専門家などが、実施記録、領収書、預託金精算を確認する
  • 相続人等への報告: 報告を受ける人を指定し、複数いる場合は代表者と全員への共有範囲を決める
  • 遺言執行者との分担: 遺産から支払う費用、受任者への資金交付、残金の遺産への戻し方を確認する
  • 事業者内部の点検: 担当者以外の承認、外部監査、苦情窓口、記録保存期間を確認する

受任者が預託金管理、遺言執行、遺贈の受取人まで兼ねると、利益相反が生じやすくなります。事業者への遺贈や寄附を契約条件にしていないか確認し、財産承継は受任者とは別の法律の専門家へ相談する方法もあります。

公正証書にすることは、死後事務委任契約の成立に共通して必要な条件ではありません。ただし、法務省が説明する公証制度では、公証人が当事者の合意を公文書にします。本人の意思と契約内容、作成時点を明確にし、原本を保管できることに意味があります。公正証書にしただけで、受任者の破綻防止や履行監督が付くわけではありません。保全と監督は別に設計します。

行き詰まったときの相談先と最終確認

相談内容によって窓口を分けます。契約書案、重要事項説明書、料金表、預託金規程、事業者の財務情報、遺言案を手元に置くと相談しやすくなります。

相談先 相談する内容 先に伝えること
市区町村・地域包括支援センター 地域の終活支援、見守り、権利擁護、利用できる公的事業 居住地、身寄り、現在困っていること、将来頼みたい事務
公証役場 死後事務委任・任意後見・遺言の公正証書、必要書類、手数料 契約案、受任者、報酬、遺言の有無、出向けるか
弁護士会・司法書士会等の法律相談 契約範囲、遺言、相続、家財処分、利益相反、監督方法 家族関係、財産、住まい、依頼したい事務、契約書案
消費者ホットライン188 勧誘、料金、預託金、解約、返金、契約トラブル 広告、説明資料、契約書、請求書、やり取りの記録
契約先・預託金管理先 実施体制、信託、破綻時の引継ぎ、残高報告 確認したい条項を一覧にし、回答を書面でもらえるか

署名前の最終確認では、頼む事務と対象外の事務、遺言との分担、契約時・継続中・死後の総費用、預託金の信託と破綻時の扱い、解約時の返金計算、受任者以外の報告先を一枚にまとめます。契約後は、その控えと連絡先を医療・介護関係者や指定した報告先へ共有し、年1回など時期を決めて見直します。

よくある疑問

よくある質問

死後事務委任契約だけで財産を渡す相手も決められますか?

相続分の指定や遺贈は、死後事務委任契約ではなく遺言で定めます。葬儀や解約などの実務は死後事務委任契約、財産を誰へ承継させるかは遺言に分け、内容が矛盾しないよう同時に確認します。

死後事務委任契約は公正証書でなければ無効ですか?

死後事務委任契約は、任意後見契約と異なり、公正証書だけが契約方式ではありません。ただし、本人と受任者が合意した内容と契約時点を明確にし、原本を保管する点から、公正証書で作る意味があります。個別の内容は公証役場や法律の専門家へ確認してください。

預託金を事業者の専用口座で管理していれば安心ですか?

専用口座による分別だけでは、事業者の破綻時に十分な返金を受けられない可能性があります。口座名義、利用者別の残高管理、定期報告に加え、信託契約による倒産隔離の有無と、破綻時の引継先・返金手順を確認します。

契約後に引っ越したり希望が変わったりしたらどうしますか?

葬儀場所、住まい、連絡先、契約中のサービスが変わると、委任内容や必要額も変わります。定期面談の時期、変更手続き、追加費用、解約・返金条件を契約書で確認し、変更後の書面を遺言や連絡先一覧と一緒に保管します。

次の一歩

次に確認すること

判断を進める前に、地域の公的な窓口で使える制度と相談先を確認してください。

関連情報・信頼性

出典・参考資料

  1. 消費者庁「いわゆる『高齢者等終身サポート事業』の利用に関する注意点」(2026年7月26日確認)
  2. 消費者庁「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(2026年7月26日確認)
  3. 国民生活センター「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」(2026年7月26日確認)
  4. 国民生活センター「高齢者サポートサービスの契約トラブルに注意」(2026年7月26日確認)
  5. 内閣府消費者委員会「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての調査報告」(2026年7月26日確認)
  6. e-Gov法令検索「民法」(2026年7月26日確認)
  7. 日本公証人連合会「公証人手数料」(2026年7月26日確認)
  8. 法務省「公証制度について」(2026年7月26日確認)
  9. 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A 任意後見制度について」(2026年7月26日確認)
  10. 法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項の策定について」(2026年7月26日確認)
  11. 一般社団法人死後事務支援協会「個人のお客様」(2026年7月26日確認)